はじめに
最近、トランスジェンダーという存在が良くも悪くも注目されるようになったと感じます。数年前と比べても、その言葉や概念を知っている人が格段に増えました。
肯定的な関心を向けてくださる方も多い一方で、FTM当事者としては「トランスジェンダー=かわいそうで支援すべき存在」という前提がそのまま扱われてしまう場面に出会うことがあり、そこで少し引っかかりを覚えることがあります。
また「トランスジェンダーがいると性別分けスペースが機能しなくなるのでは」「未治療のまま公衆浴場に入っていいのか」といった懸念もよく目にします。体へのコンプレックスが強く、そもそも利用したいと思えないような空間について議論されることに、複雑な気持ちになることもあります。
このように、非当事者のトランスジェンダー理解には、まだ課題が残っていると感じます。しかし、非当事者がトランスジェンダーについて自力で学ぼうとするのは、簡単なことではありません。
そこで今回「トランスジェンダーQ&A: 素朴な疑問が浮かんだら」を紹介したいと思い、記事を書くことにしました。(本当は、いわゆるトランスヘイトをしている人に読んでほしいのですが、そういう人に限って届かないものですね。)
そもそも性別、トランスジェンダーとは何か
第1部「性別の重み」と第2部「基礎知識」では、人々がどのように性別という概念を捉えているのか、そしてトランスジェンダーとは何かについて、丁寧に説明されています。
当事者として知っている内容も多かったのですが、これから学びたい人にとっては基礎的な知識が網羅されており、とても理解しやすい内容だと思いました。
特に「トランスジェンダー=身体と心の性別が異なる人、反対の性別になりたい人」という説明が一般的ですが、それが不正確であると書かれている点には強く共感しました。実際、その説明のせいで、私はボーイッシュな女性として扱われることがよくあったからです。
また「FTM」という名称を嫌う人がいるという指摘にも確かにそうだと思いました。私自身は、幼少期から男性として認識していたものの、周囲には女性として扱われていたため、FTMという言葉は自分にとってしっくりきます。一方で、幼い頃から性自認に沿って扱われる子どもが増えていくと、この名称を使う人は減っていくのかもしれません。
とはいえ現時点では、メディアで使われる「トランス男性」という表現にあまり馴染めませんし、毎回「出生時は女性で、現在は男性として生活している」と書くのも手間がかかりますし、私としては、FTMと名乗るのが最も自然だと感じています。
さらに、第2部の最後に登場する「出生時に男性を割り当てられた4人の人生あみだくじ」では、トランスジェンダーであることが自然に受け入れられるかどうか、あるいは理解されず悩むかが紙一重で分かれることが示されており、理解の重要性を改めて実感しました。
素朴な疑問は素朴ではない
第3部「性別分けスペース」と第4部「トランス差別はいけないけれど気になる疑問」では、トイレや公衆浴場などの利用を巡る議論が取り上げられ、よくある批判や疑問に対して丁寧な説明がされています。
その背景には既存の価値観や偏見が入り込んでいたり、当事者について知らないまま疑問が形成されているために、「素朴な疑問」は本当は素朴ではないという指摘があり、これにもとても納得しました。
質問項目だけを見ると、当事者にとっては心が痛くなるような内容も多いのですが、それらに対して誠実に説明されていたため、全体を通して読んでも精神的な負担は大きくありませんでした。
さいごに
当事者として、この本が出版されること自体をとても嬉しく思っています。知識としては、知っていることが多かったですが、客観的かつ、論理的に書かれている文章を読んで、改めてトランスジェンダーという概念を理解することができました。
こうした本をきっかけに、トランスジェンダーについて考える人が少しずつ増えていくと嬉しいです。